ぼくの父上は
とても とても 色々な種類の宝石を持っている
「あ!その色 とても綺麗ですね」
「ふふん そうであろう? これは数ある石の中でもわしのとっておきじゃ」
「ぼく、そんな色の石、見たことありません!」
いいなあ いいなあ こんな色の石で遊んだらきっと楽しい
この石すごく欲しいな ――
「これはな、その昔わしのそのまた父上が、仕えていた王より賜ったものじゃそうな…」
「…? 父上の…そのまた父上??の王様?」
その石の来し方は ぼくには何が何やらさっぱりでしたが
その石を通して どこか遥か遠くを見る父上が
とても 幸せそうなお顔をなさるので
ぼくは 訳も分からずつられて 笑い出してしまいました
「しまった!あの石が欲しいです、って言うの忘れてた!」
父上の幸せに当てられたぼくが はたと そのことを思い出したのは
それから 実に 実に 5日後のことでした
色んな来歴を持った石たちを、眺めたりお手入れしたり、綺麗に並べ替えたりするのは
不死のエルフ達にとってはきっと楽しいばかりではなく、時には自身の辛い記憶とも
結びつくものでしょうけれど、闇の森の王様にとって、大切なコレクションたちとの語らいが、
辛い記憶よりずっと多くの幸せな記憶を
呼び起こすひとときであれば良いなあ、と思います。
お題 『宝石』
(Thranduil + Legolas)
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2006.11.1