! <注意事項> !
・時期としては、ちょうど斉の宣王が崩御した直後の辺りを想定して書いています。
・回答を読んでいただく前に、予備知識として『小説十八史略』の一巻と、
『史記(ちくま学芸文庫版だとなお良し)』の蘇秦・張儀列伝を読んでいただくと、理解が早いかと。
・でも、ところどころオリジナル要素も混じっています。
 だから、ぶっちゃけ上の文献を読んでも読まなくても同じかもしれません(待て)。
・回答の中では両人とも自分のことを『縦横家』と称していますが、
 当時からその呼称があったかどうかは知りません。 『遊説の士』とでもすれば良かったのかな…?
・文字が赤いのが蘇秦のセリフ、緑色なのが張儀のセリフです。
・両人とも色々と思考回路がおかしいです。

      ではどうぞ〜。

          ↓






1.まずはお二人の自己紹介をお願いします

蘇「あー…俺は蘇秦という。世に言う、縦横家というやつだ。
 今日はあのジジイ――、もとい鬼谷老師に緊急の用事とかでいきなり母校に呼び出されたんだが。
 ったく、先王(宣王のこと)の葬儀の準備でクソ忙しいこのときに、あの老師は一体何のつもりなんだかな。
 …と、言うか、だ。ひとつ訊いていいか。何で此処にお前が居るんだ張儀、おい!!


張「はっはっは(さらりとスルー)。皆さん、只今この野郎からご紹介に預かりました、俺は張儀といいます。
 俺もこいつと同じく鬼谷老師の門下の出身で、一応縦横家の端くれを自負しています。
 俺も今日は老師のお招きでまかりこした次第です」


蘇「そのへりくだり方がすげぇ腹立つ…!」



2.では、今度はお互いを簡単に紹介してみてください

蘇「ま、まあいい。よくものこのこ秦から出てこれたないい度胸だ表へ出ろ、とでもやりたい所だが、
 老師の膝元でそういう話は野暮というものだろう。さっき言った通り、こいつは張儀だ。
 秦にあって諸国連衡を推進する、いわば俺と真っ向から対立する人物、といったところだな」

張「こいつは蘇秦。老師の門下で知り合って以来ざっと20年、俺とはずっと張り合ってきた仲だ。
 かつては対秦合従を唱えて、秦以外の6ヶ国の宰相を兼任する、というえらくハデくさい事をしていたな」

蘇「ああ、かつては、な。こいつの暗躍で全部パーになったがな!(嫌な笑み)」


3.そんなお二人の間柄を一言で説明すると?

蘇「無二の好敵手。これに尽きるな!」

張「上に同じだな」
   (そして、互いに無二の理解者といったところだが…。誰が面と向かって言うかそんな事)

蘇「あぁ、その辺も同意だ。しかしだな、俺の弟達でさえ俺らのことを、やれ互いに恨みでもあるのかとか、
 なんでわざわざ対立したがるんだ罠に掛け合いたがるんだ馬鹿か兄さん達は、と言って来る。
 別に恨みつらみじゃないんだが」

張「こいつを策謀で殺せるのは、この広い世の中で俺しか居ないし、逆もまた然りだ。それで良い」
   (だから!俺の思考を揣摩で読むのはやめろ!)


蘇「(ニヤリ)俺としても、いつか誰かの策に掛かって死ぬ事があったとしても、
 その相手がこいつなら、まぁ本望だ。というか、こいつ以外のやつ相手に不覚をとるなんて事になったら、
 多分俺は自分を許せない」



4.お二人は、いつ何処でどのように出会いましたか?

張「あ、これは覚えてるぞ。アレだ、俺が鬼谷老師の門下に入ったその日のことだったな。」

蘇「ほー、あんな昔の事まで覚えていてくれたとは光栄だな。俺も覚えてるが。」


張「老師から施設の説明を受けながら校舎の裏庭に出て、ふと上を見上げたら、庭木に
 こいつが引っ掛かっていたんだ。」

蘇「 引っかかっ…!おま、あれは木の上で昼寝していただけだ!先輩に向かって失敬な!」

張「先輩と言ったって入門時期は大して違わないだろう。お前確か、そん時先輩方のイジメに遭って
 校舎に入れなかったんだよな。」


蘇「ああ。どうも目立ち過ぎてむかつかれたらしい。因みにその時お世話になった先輩方には
 彼らの卒業までにきーっちり、ご好意をお返ししておいたぞ(ニコニコ)」



5.そのときと今とで、お二人の関係は変わりましたか?

蘇「いや別に。何も特には。」

張「どこそこの宰相になっただの、互いに立場は色々変われど、関係自体は基本的には何も変わらないよな」

蘇「全くだ。もし仮にお前が先に仕官して、合従を唱えていたとしたら、俺は間違いなく連衡を唱えてたと思う。
 折角の好敵手なんだ。同じ外交策をやるんじゃ、勝負にならなくてつまらないからな」



6.今後もその関係は変わらないと思いますか?

張「と、いう訳で。これからも多分、俺達の関係はなんら変わらんと思う。
 俺が俺で、こいつがこいつである限り」


蘇「上に同じ。互いに、恨みがある訳でも嫌いな訳でもなく、ただただ純粋に謀略合戦を楽しむだけだ。
 全力で、命を懸けてな」


張「何故、この楽しさが周りには理解されないんだろうな!」


蘇「いや、だから無理だっちゅーの。いい加減諦めろ。俺達だけが解ってればそれで良いんだし」



7.これまで相手からされた事で、感動した、またはムカついたエピソードはありますか?

張「おい、これだけは言わせろ!お前、あれはヒド過ぎるだろう、なあ!」

蘇「痛っ…おい、肩を掴むな!何の話だ、いきなり。」


張「俺がお前に仕官を頼みに行った時の話だ!ほら、お前はあのとき趙に居て…」

蘇「ああ、あの時か!いや、だからウチの食客に説明させたろ?あれはあくまでも、
 お前に秦で頑張ってもらいたいなー、っつーライバルとしての親切心というか。
 結局あれがきっかけでお前は秦で仕官出来たんだし、感謝されこそすれ、なぁ!」


張「うるさい!言っとくが、アレには本気で傷ついたんだからな!」



8.では、相手に「これだけは忠告しておきたい」という点はありますか?

張「(そっぽを向きつつ)これからも俺を失望させるなよ。以上!」

蘇「…まだアレを根に持ってたとはなぁ(苦笑)。ま、いいや。
 お前こそ、俺以外のやつの手になんぞ掛かってうっかり死ぬなよ?」


9.ちょっと、相手を褒め称えてみて下さい

張「その立ち居振る舞いは端麗颯爽にして威風堂々、大雲の龍と共に遥か玄天を駆けるが如し。
その頭脳は博学、博識にしてこの世に二つとない英知を備え云々かんぬん。
 褒め称える、ってこんなカンジで良いのか、オイ(にまにま)」


蘇「(ああ寒気がする。)良いんじゃないのか?っつーかな、俺達は縦横家、
 いわば弁論のプロ中のプロだろうが。正直、口先だけでこう褒め称えられてもそれほど嬉しくない」


張「全くだ」



10.それでは、今度は相手をけなしてみて下さい

蘇「お、言っていいのか?んじゃあ、お前の嫁さん、出ーベソー。(超適当に)」

張「(うお、そう来たか!)これもまた同じく。お互いに、考えていることはおおよそいつも筒抜けだ。
 それに、付き合いを始めてから四半世紀近く、もう口先でどうけなされようと特にどうという事もない。」



11.休日にバッタリ外で出会ったら、何をして過ごしますか?

蘇「ははっ!今の俺達の立場で『外でバッタリ』なんて、絶対にあり得ないな!」

張「今回の邂逅でさえ、老師の手引きがなければ実現しなかったろうしな」

蘇「まぁ、多分どっちかの家に上がりこんで蔵書を読みふけって徹夜で討論、みたいなことになるんだろな」


張「実際、学生だった頃はいつもそうだったな」



12.「これでなら相手に勝てる!」というものはありますか?

張「弁論術。」

蘇「ウソつけ。弁論の力自体は互角だろうが。そうだなー、お前ちょっと見た目が暗いからな。
 初対面のやつからすれば、俺の方が取っつきやすいかもな。差異なんて、そのくらいじゃないか?」


張「…いや、否定はしないが。お前、さらっとそういう事言うか。というかな、お前の弁舌は少し暑苦しい。
 細作から聞いてるぞ、お前が昔、趙の粛候を説得したときの台詞。日本語訳で文庫5ページ分、
 継ぎ目なしだぞ?!ありえんだろう、アレは。
 説得する相手によっては、お前の弁舌は一歩間違えば逆効果になりかねん」



13.逆に「これは相手に敵わない!」というものはありますか?

蘇「そうだな、…あと正直、時流を読む力はお前の方がほんの少し、上かも知れん。
 俺の合従策は、結局頓挫した訳だから」


張「まあ、そうへこたれるな、お前らしくもない。
 うーむ、そうだな。お前には周囲の目を惹き付ける力があると思うよ。
 なんだかんだ言って、無名の家柄のポッと出の人間が6ヶ国の君主を説得して回ることに
 成功したのは事実だろう。
 そういう、周囲を巻き込む圧倒的な熱意。そういうのは、俺にはあまりないから」


蘇「うわ、俺初めてお前に慰められたよ…!」



14.相手のイメージカラーは何だと思いますか?

張「上記の通り、お前は言葉が暑苦しいところがちょっとバ…赤っぽいと思う」

蘇「ちょっとまて、今お前『赤』じゃなくて『バカ』と言おうとしなかったか?
 で、そういうお前は落ち着きくさった色だと思う。暗めの緑とか、そんな感じの」


張「そうか?ふぅん」



15.相手の異性の好みはどんなタイプだと思いますか?

張「おお!お前アレだろう、燕の文侯の…!(にやにや)」

蘇「ちょっ、オイ待て!いいか、あれは全くの事実無根だからな!
 くそ、誰だあんなあほらしいデマ流したのは…!(隣を見る)」


張「なんだ、違うのか?(明後日の方向を向いて口笛を吹きながら)」


蘇「そういうお前こそ、細君はどうなんだ。直接会ったことないからよく知らんが」


張「ああ、妻とは卒業してから結婚したからな。そうだな、いつぞや『俺に舌は付いてるか』と訊いたら
 後頭部をはたかれた。頭の回転は速いが、あまり冗談は通じないやつだ」



16.相手は、自分の目から見ても世間的に見られている通りの人物だと思いますか?

張「やや暑苦しくて頭が切れていて弁舌の達人。そういう意味では正に世間の評価通りの人間だと思う」

蘇「やや陰気で頭が切れて以下同文。ま、こんなやつだが良いところも色々あるさ、長い付き合いだからな」



17.相手がもし先に死んだとして、そのときの自分を想像できますか?

蘇「勿論!何事もここぞというときにはイメージトレーニングの有無が物を言うからな」

張「これってそういう趣旨の質問じゃないと思うんだが…。まあいいか。
 互いに謀略勝負に手加減はしないと決めているからな。この先お前が死ぬ可能性も、
 俺が死ぬ可能性も、当然あるだろう。
 だがまあ…そうだな。お前が死んだら俺は三日三晩泣き続けるかも知れない」


蘇「そりゃ光栄」


18.質問も終わりに近づき、これまで相手について色々語っていただきましたが、
  かく言う貴方は人を見る目に自信がありますか?


蘇「そりゃな、人の性格でも心の動きでも、正しく見抜けないことには説得できるものも出来なくなるからな」

張「縦横家にとって必須能力と言えるだろうな」


蘇「例えば、こないだ斉の宮廷の廊下で楚からの使節のおっさんとすれ違ったけどな、
 一目見て『ああ、これは俺とも張儀とも気が合わないな』と思ったね。ピンと来た。
 あの目は絶対、縦横家の類を嫌悪する目だった」


張「ははぁ。大体誰のことか見当は付くが(多分屈氏だろうな)一応メモっとこう」



19.それでは最後に、相手に何か言い残したいことがありましたらどうぞ

蘇「これからも、俺の才に匹敵する人間でいろよ(真顔)」

張「これが今生の別れで最後の会話になるかも知れんってのに、こいつときたらこれだからなぁ…!
 おい、最後に一発殴らせろ。」


蘇「いやなこった。じゃあな!死ぬまで達者で暮らせよ!」


張「ああ、お前こそ!」


20.(これは管理人様への質問です)このコンビへの思い入れ等ありましたら、この機会にどうぞ

つ、疲 れ た …!設問が難しかったのか、この二人で挑戦したのが無謀だったのか。
ええと、とりあえずこんなのが私の脳内の二人です。
脳裏に描いたとおりのイメージがそのまま伝わってるかどうかは甚だ心許ないですが、
要は特異な才能と志向を持て余した、割れ鍋に綴じ蓋というか鏡の中と外というか、そんな印象です。
要するに、好敵手であり、何だかんだで大親友です。

長々とお付き合いいただき、本当に有難うございました!

左が張儀で右が蘇秦。何だかんだな大親友。

2006.11.15
wed

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